どうも、中パンダです。
突然ですが、作曲をされている皆さんは、何かの拍子にふと和風な曲が作りたいと思ったことはないでしょうか?(自分は時々あります(笑))
あくまで個人的な感覚ですが、自分の周りのDTMerのうち半分くらいが、最低1曲は和風曲を作ったことがあるようで、それなりに作りたいという人はいるようです。
今回は、そんな和風な曲を作るのに欠かせない音階の話と、それを使ったメロディの作り方について、自作曲を用いて解説していきたいと思います!
今回解説する曲は、1年ほど前に深夜の2時間DTMで作ったこちらの曲です。
今の季節にぴったりな、秋風をテーマにした和風ハウスです。
タイトル:秋の夜風
— 中パンダ@APPOLO10&音けっと4参加予定 (@whitepanda924) October 13, 2018
#深夜の2時間dtm 秋風をイメージした曲
普段あまり作らない曲調で作りました。スローテンポな和風EDM(にしたつもり)です! pic.twitter.com/wieRKomKLW
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※当ブログでは音階のことを「スケール」と表記していますが、今回は説明の都合上「音階」と表記致します。
音階について
今回は、ニロ抜き音階というものを使ってメロディを作ります。
ニロ抜き音階とは、通常のポップスなどで使われる7音の音階(ダイアトニックスケール)から、2番目と6番目の音を取り除いた音階です。
この音階は、日本古来からある音階を基に明治時代以降に作られた音階のひとつで、長音階と短音階があります。
長音階は沖縄っぽい南国風の陽気な雰囲気、短音階は本土風のしっとりした和風な雰囲気を持っています。
この音階をメロディに使うことで、簡単に和風な雰囲気を表現することができます。
今回解説する曲では、ニロ抜き短音階を使ってメロディを作っていきます。
曲の解説
曲の構成は
- 最初~19秒付近:イントロ
- 19秒付近~57秒付近:バース
- 57秒付近~1分16秒付近:ビルドアップ
- 1分17秒以降:ドロップ
です。
今回解説する曲はC#マイナーのニロ抜き音階(ニロ抜き嬰ハ短調)で、構成音はC#,E,F#,G#,Bとなります。(D#とAは除外)
この音階は、ビルドアップ以外全てのパートで用いています。(ビルドアップはC#マイナースケール)
以下に、個別のパートを解説していきます。
イントロ
ピアノの伴奏から始まりますが、右手のフレーズにニロ抜き音階を使っています。
上半分がフレーズ、下半分がコードばらし
C#マイナースケールの2番目D#と6番目Aの音を避けるようにフレーズを作っています。
イントロは曲の第一印象を決定づける重要なパートなので、ニロ抜き音階を前面に出して和風な雰囲気をはっきりと出しています。
また、このピアノパートは右手でフレーズ、左手でコードのばらしを演奏していますが、音域が近いので、左手の高音域側が右手の低音域側と重複して一つのフレーズのように聴かせることができます。
バース
笛のメロディが入ります。
(尺八っぽい音色が欲しかったのですが、あいにく音源を持っていなかったので、代用としてHALion Sonic SE付属のEthnic Fluteに薄くコーラスをかけたものを使っています)
笛メロディ(バース)
イントロと同じく、D#とAの音を避けるようにフレーズを作っています。
ビルドアップ
ドロップへとつながる盛り上げパートです。
笛メロディ(ビルドアップ)
このパートのみ通常のマイナースケールを使っていますが、これは曲調に変化をつけるためです。
ニロ抜き音階のように構成音が5つしかない音階は、7音使えるメジャースケールやマイナースケールに比べて表現の幅が小さく、どうしてもマンネリ化しがちです。
そのため、マンネリ化を防ぐために和風曲の中でも一時的にマイナースケールを使い、聴き手が飽きないようにしました。
ドロップ
リードやバックでシンセが入り、曲中で一番盛り上がるパートです。
シンセメロディ
このパートでは再びニロ抜き短音階に戻り、イントロやバースと同様にD#とAの音を避けるようにフレーズを作っています。
ドロップ後半では笛の対旋律が入りますが、このフレーズもニロ抜き音階で作っています。
笛対旋律
対旋律はメロディほど目立たないがゆえに、音階に含まれない音を使ってしまうとオケに馴染まず浮いてしまいます。
曲によっては音階に含まれない音を使うケースもありますが、今回はあくまで「和風曲」にしたいので、ニロ抜き音階に忠実に対旋律を作ります。
【余談】ヨナ抜き音階との違い
和風曲を作るときに用いられる代表的な音階の一つに、ヨナ抜き音階があります。
(世間的にはこちらの方がよく知れ渡っているような気がしますが、気のせいでしょうか…?)
ニロ抜き音階が"2"と"6"を取り除いたものであるのに対して、ヨナ抜き音階は"4"と"7"を取り除いたものになります。
ヨナ抜き長音階は雄大でどことなく大陸っぽい雰囲気、ヨナ抜き短音階は平安時代の京都のような日本的で妖気漂う雰囲気の音階です。
ヨナ抜き音階もニロ抜き音階と同じく、日本古来からある音階を基に作られたものですが、基となる音階が違うため雰囲気は異なります。(もっと言うと、同じニロ抜き音階でも、長音階と短音階で違います)
そもそも、元々別々に存在していた音階を西洋音楽に当てはめて作られた音階なので、全く別物であると考えたほうがよいです。
なので、「ヨナ抜き音階は~、ニロ抜き音階は~」という区別は全く意味がなく、4種類の和風音階が存在する、という考え方が妥当ではないかと思います。
ただ、ヨナ抜き長音階とニロ抜き短音階に注目すると、音階の開始音(主音)が違うだけで音の並びが同じ、いわゆる平行調になっています。(例:Cから始まるヨナ抜きハ長調と、Aから始まるニロ抜きイ短調が平行調)
なので、この2つの音階については雰囲気が似ていると言えます。
おわりに
今回は、ニロ抜き短音階を使った和風曲の作り方について記事を書きました。
和風な雰囲気を表現する方法はいくつかありますが、メロディを工夫する方法が一番「和」の雰囲気を出せると思います。
和風らしい曲を作る際に、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
また、ニロ抜き音階は、和風曲に限らず日本のポップス音楽のいたるところで見ることができます。
和風曲を作らなくても、今回紹介した音階を意識すれば、音楽における「日本らしさ」の新しい発見につながるのではないでしょうか?
それでは、今回はこの辺にしておきます。
ではではノシ