どうも、中パンダです。
皆さんは、普段ユーロビートは聴いているでしょうか?もしくは、作ったりしているでしょうか?
昨今のメジャーシーンでは、ごく一部を除いてユーロビートを聞く機会はあまりないかもしれません。
しかし、コアなファンが多いジャンルなので、作ってみたいという方もそれなりにいるかと思います。
今回は、特に1990年代に作られたユーロビートに注目して、自作曲を交えながらその作り方を解説していきたいと思います!
解説に使うのは、1年以上前になりますが深夜の2時間DTMで作ったこちらの曲です。
タイトル:Fly Over Ridge#深夜の2時間DTM ジャンル:ユーロビート
— 中パンダ (@whitepanda924) 2018年5月31日
遅刻しすぎて投稿するタイミングを見失いました…
某走り屋アニメで流れてそうな雰囲気に仕上げました。自己満足ですが、作るのが楽しすぎてアクセル全開でぶっ飛ばしました(笑) pic.twitter.com/Zr4BFluM4r
2021/7/31追記:Audiostockにてフルバージョンを配信しました!よろしければこちらもぜひ聴いていってください!
編曲編はこちら↓
ユーロビートの分類について
1980年代を中心に世界的に流行していたユーロビートですが、年代によって大きく2種類に分けられます。
80年代ユーロビート
BPM120~130の曲がほとんどで、世界的に流行していた頃のユーロビートがこれに当たります。
前身となるHi-NRG(ハイエナジー)の流れを受け継いだオクターブ奏法のベース・TR808系キックの4つ打ち・電子楽器と生楽器を複合したサウンド等が特徴です。
以下、代表曲です。
90年代ユーロビート
BPM150~160と80年代よりもテンポが速くなり、シンセがより派手なものになっていきます。
世界的に見れば、ユーロビートは1990年代にはブームが過ぎて下火になっていましたが、日本ではその後も人気が根強く残りました。
いわば、日本でのみ流行していたものがこちらになります。
以下、代表曲です。
今回は、後者に着目します。
音階(スケール)
ユーロビートにはペンタトニックスケールがよく使われます。
いくつかの記事では既に紹介していますが、このスケールは1オクターブの中に5つの音が含まれるスケールで、和風音楽や東南アジアのガムラン、スコットランド民謡、南米民謡など世界中で見られます。
このうち、ユーロビートで使われるのはメジャーペンタトニックスケールとマイナーペンタトニックスケールで、この2つは偶然にも和風音階(それぞれヨナ抜き長音階とニロ抜き短音階)と一致しています。
そのため、ヨーロッパ発祥のジャンルでありながら日本人にとって馴染みやすいジャンルであると言えます。
このほか、マイナーペンタトニックスケールに6度の音を加えた、いわゆる「6度抜きマイナースケール」もよく使われます。
和風音階の関連記事↓(注意:別の曲を解説しています)
6度抜きマイナースケールの記事↓(注意:別の曲を解説しています)
よく使われるコード進行
あくまで個人的な意見ですが、音楽理論的に模範的なコード進行が多いように感じます。
具体的には、サブドミナント(SD)→ドミナント(D)→トニック(T)と、順番にコードの機能が流れていくコード進行が多い印象です。
よく使われるものとして、以下の進行があります。("|"はコードの区切り。それぞれのコードを鳴らす長さは指定しない)(カッコ内はCメジャーorAマイナースケールでのコード進行)
Ⅳ (SD) | Ⅴ (D) | Ⅵm (T) (F | G | Am)
サブドミナントのふわっとした雰囲気から始まり、だんだんとベース音が上昇していく高揚感あるコード進行です。
サビやシンセリフで使われる頻度が極めて高く、個人的には"キメ"のコード進行として多用されている印象があります。
Ⅳ (SD) | Ⅴ (D) | Ⅲm (D) | Ⅵm (T) (F | G | Em | Am)
サブドミナントで始まる点は先ほどと同じですが、こちらはドミナントが2回出現します。
そのため"進行感"がとても強く、サビで使われる頻度が高いコード進行です。
また、JPOP王道進行の一つでもあり、このコード進行を使うと日本のポップス音楽に近い響きになります。
Ⅵm (T) | Ⅳ (SD) | Ⅴ (D) ( | Ⅵm (T) ) ・・・ (Am | F | G | (Am))
SD→Dの流れを後半に持っていき、その後トニックにつなげるイメージのコード進行です。
Ⅵm (T) | Ⅰ (T) | Ⅱm or Ⅱ (SD) (Am | C | Dm or D)
SD→Dの流れはありませんが、マイナー系のユーロビートに比較的多くみられるコード進行です。
このとき、ⅡmをⅡにすると一瞬だけスケール内に無い音が入り、曲の雰囲気にアクセントをつけることができます。
Ⅵm (T) | Ⅳ (SD) | Ⅴ (D) | Ⅰ (T) (Am | F | G | C)
先述のコード進行ほどの出現頻度はありませんが、それなりによく使われるコード進行です。
いわゆる小室進行で、サビでよく使われる印象です。
曲構成
ほとんどのユーロビートは次のような構成で作られています。
- イントロ8or16or32小節
- シンセリフ8小節
- Aメロ8小節
- Bメロ8小節
- サビ8or16小節
イントロとAメロの間に、シンセサイザーによる印象的なリフが入るパート(シンセリフ)があるのが特徴です。
このパートの出来が曲全体の印象を決めると言っても過言ではないくらい、曲中で重要なパートとなります。
全体を通して、8の倍数で小節を区切る場合が極めて多いです。
そのため、オリジナリティを出すにはあえて奇数小節(1,3,5,7etc)や3/4拍子小節などを組み込むのも有効かもしれません。
作例の解説(作曲)
今回解説する曲の構成は
- 最初~13秒付近:イントロ(8小節)
- 13秒付近~25秒付近:シンセリフ(8小節)
- 25秒付近~49秒付近:Aメロ(16小節)
- 49秒付近~1分1秒付近:Bメロ(8小節)
- 1分1秒付近~1分25秒付近:サビ(16小節)
- 1分25秒付近~最後:シンセリフ(8小節)
で、イントロ~BメロがF#マイナースケール、サビがC#マイナースケールとなります。
全体的にアニメ「頭文字D」の挿入歌で使われているような曲を意識して作りました。
以下に、各パートの解説をしていきます。
なお、解説する曲はメジャー・マイナーの調性が曖昧なため、特にコードの度数は全てメジャースケール基準で表記します。
メロディ
イントロ
イントロフレーズ
F#の音を中心に、複雑すぎないシンプルなフレーズにしています。
ユーロビートは、短く刻むようなシンセフレーズを使ってリズム感を出す曲が多い印象なので、この曲でもノートの長さを短くしたフレーズを多用しています。
シンセリフ
シンセリフフレーズ
先ほども書いた通り、シンセリフは曲中で極めて大事なパートなので、いかに聴き手の印象に残すかが重要になります。
そのため、マイナーペンタトニックスケールを使った16分音符中心のうねるようなフレーズを作りました。
イントロと同様、スタッカートを利かせたシンセの同音連打も多用しています。
Aメロ
メロディ(Aメロ)
F#マイナーペンタトニックスケールに6度の音(G#)を加えた、いわゆる6度抜きマイナースケールを使いました。
8分音符主体で裏拍を意識したメロディになっています。
シンセリフがうねるような高低差のあるフレーズだったので、Aメロではそれと対比させて、少し抑え気味にメロディを作りました。
Bメロ
メロディ(Bメロ)
こちらもいわゆる6度抜きマイナースケールで、F#マイナーキーになります。
Aメロと同じ8分音符が主体のメロディですが、Aメロとの対比のために気持ち表拍を意識したメロディにしました。
サビ
メロディ(サビ前半)
メロディ(サビ後半)
サビのメロディはC#マイナーペンタトニックスケールで作りました。
C#マイナースケールの音のうち、2番目と6番目の音(D#とA)を避けるようにメロディが作られている様子が分かるかと思います。
付点8分や16分音符を使い、AメロやBメロとはかなり違う雰囲気のメロディにしています。
サビは曲中で一番盛り上がるパートなので、曲全体の中での最高音C#の音を使っています。
また、ガツンと来るサビにしたかったのでメロディは小節頭から始め、小節の途中からメロディが始まるAメロや、手前の小節からメロディが始まるBメロとも対比させています。
パートが進むにつれて曲が盛り上がり、最後は最高音C#の音を延ばしてテンションMAXの状態でサビが終わります。
コード進行
イントロ
イントロコード
先ほども書いた、よく使われるコード進行を使っています。
元々この部分のコード進行は | F#m | A Bm | でしたが、Bmだと曲調が重くなる印象だったので、Bに変更しました。
BのコードはF#マイナースケールに含まれないD#の音が入っていますが、メジャーコードに変更したことでユーロビートらしい軽快な感じの曲調にすることができます。
シンセリフ
シンセリフコード
こちらのパートでも、よく使われる | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | を含んだコード進行を使っています。
シンセリフパートの出来は極めて大事なので、"キメ"のコード進行を使いました。
Aメロ
Aメロコード
| Ⅵm | Ⅴ | Ⅳ | Ⅴ | の流れを繰り返す、シンプルなコード進行です。
シンセリフが派手なパートだったので、それと対比する形で1小節単位でコードチェンジするシンプルなものを使いました。
Bメロ
Bメロコード
SD→Dの流れが無いコード進行が中心のパートです。
個人的に、Bメロは多少自由に作っても許されるパートだと考えているので、いわゆる"ユーロビートっぽくない"コード進行を使ってみました。
また、D→A→Eの進行を繰り返すだけでは面白くないので、2回目はAのベース音をC#に変えてオンコード(A/C#)にしました。
さらに、サビでC#マイナースケールに転調することを考えて、最後の2小節はC#マイナースケールに含まれるコードを選んで使いました。(F#mはF#マイナーにおけるⅥmであり、C#マイナーにおけるⅡmと見なせる)
こうすることで、サビで転調することを聴き手にさりげなく意識させることができます。
サビ
サビコード(前半)
ここはやはりキメの | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵ | を使います(笑)
最後のオンコードF#/A#は、次のAにベースが半音でつながるようにするためのコードです。(B→A#→Aとベース音が変化する)
サビコード(後半)
サビの最後は、進行感の強い | Ⅳ | Ⅴ | Ⅲm | Ⅵm | を使って締めくくります。
おわりに
今回は、90年代風ユーロビートの作曲方法について解説しました。
自分も趣味でユーロビートを何曲か作ることがありますが、音階が日本的だったり、曲構成がJPOPと似ていたりと、洋楽とは思えないくらい日本の音楽に似ている印象があります。
このジャンルを突き詰めていけば、日本のポップス音楽のことも同時に理解できそうな気がしますが、まだまだそこまでは自分も行きついていません…
いつの日か、その辺りも理解できたらいいな、と思っています。
また、ユーロビートの編曲編記事もありますので、こちらもよろしければ参考にしてみてください!
それでは、今回はこの辺にしておきます。
ではではノシ