どうも、中パンダです。
前回の記事で、1990年代風ユーロビートの作曲について書きました。
今回はその続編として、編曲の記事を書いていきます。
作曲編はこちら↓
"ユーロビートらしさ"を出すための重要な要素の一つに、使用楽器とそのフレージングがあります。
この2つの要素を意識することで、より一層ユーロビートっぽい曲に仕上げることができます。
以下に、制作のポイントと自作曲を使った例を紹介していきます。
タイトル:Fly Over Ridge#深夜の2時間DTM ジャンル:ユーロビート
— 中パンダ (@whitepanda924) 2018年5月31日
遅刻しすぎて投稿するタイミングを見失いました…
某走り屋アニメで流れてそうな雰囲気に仕上げました。自己満足ですが、作るのが楽しすぎてアクセル全開でぶっ飛ばしました(笑) pic.twitter.com/Zr4BFluM4r
※あくまで個人的な見解なのでいろいろ間違っているかもしれませんが、ご了承ください
2021/7/31追記:Audiostockにてフルバージョンを配信しました!こちらもぜひ聴いていただければ!
編曲面の主な特徴
オクターブベース
オクターブベースイメージ
ベースにおいて、基の音とその1オクターブ上の音とを交互に繰り返すフレーズが多用されます。
基本的には8分音符の長さで繰り返されることが多いですが、裏拍の音を強調している曲が多い印象です。
ハードロック風ギター
ディストーションをがっつりかけ、かつハードロック風の激しい奏法が多く用いられます。
具体的には、ブリッジミュートを利かせた刻みフレーズやパワーコード、速弾きのリフなどが使われます。
SuperSawリードシンセ
ユーロビートではリードシンセの音色に大きな特徴があります。
基本となるのはSuperSawと呼ばれる音色で、少しずつ音程をずらした複数(6~8個程度)のノコギリ波を重ね合わせて作られます。(曲によっては、ノコギリ波の他に矩形波が使われている場合もあります)
これに加え、音量や音程・フィルター・FM変調などを高速で変化させてアタック成分が強調されており、全体的にわずかにビブラートがかかった音色となっています。
4つ打ちバスドラム中心のリズム隊
ダンスミュージック全般にも言えることですが、リズム隊の中でも特にバスドラムに重きが置かれており、4分音符間隔で等間隔に打ち込まれる、いわゆる4つ打ちとなっています。
逆にスネアはあまり目立たせず、後ろの方でさりげなく聞こえる程度の音量で鳴っている場合が多いです。
音色の特徴として、バスドラムは高音成分(5kHz以上)を含むものがよく用いられます。(「ドスッ」とした感じの音色)
バスドラム周波数イメージ
曲の解説(編曲)
以上を踏まえて、実際にユーロビート風の編曲をしていきます。
今回解説する曲の構成楽器は、ドラム・ベース・エレキギター・シンセサイザーです。
特にシンセは、用途によっていくつか使い分けをしています。
以下に、各楽器の使い方を解説していきます。
ドラム
ドラムフレーズ(シンセリフ部分)
フィルインなどごく一部を除き、4つ打ちでドラムフレーズを作りました。
バスドラムを強調し、スネアはわずかに聞こえる程度に鳴らしています。(実際に聞いても、スネアはほとんど聞こえなかったかと思います)
ベース
ベースフレーズ(イントロ)
一部を除き、曲全体でオクターブベースを使っています。
基本的にコードのベース音をなぞり、一部ではオンコードとしてベース音以外の音も使っています。
また、裏拍を強調するため、このトラックにはサイドチェインのかかったコンプレッサーをエフェクトとして適用しています。
サイドチェインとは、あるエフェクトのかかり具合を別のトラックの信号で制御することで、今回はバスドラムが鳴った瞬間にベースに対してコンプがかかるように設定しました。
サイドチェインイメージ
この時、サイドチェインのコントロールをしやすくするため、バスドラムのトラックとは別にサイドチェイン専用のトラックを作り、そこからベースのコンプを制御しています。
エレキギター
ギターフレーズ(Aメロ)
パワーコードを中心に、ブリッジミュートを利かせたハードロックな感じのフレーズにしました。
今回使ったのはKMG7というメタル仕様のギター音源で、パワーコード・ブリッジミュート等の奏法がキースイッチを使って切り替えられます。
そのため、フレーズとキースイッチを合わせて確認していただくと演奏がイメージしやすいかと思います。
ちなみに、今回使ったキースイッチは次の通りです。
ブリッジミュートを16分音符で高速に刻む場合は単音弾きのG#1、存在感ある強い響きが欲しい場合はルート+5thのD#1のキースイッチを使って、演奏に表情を付けました。
イントロリフ
また、イントロでは単音弾きのキースイッチG1を使い、速弾きを意識したフレーズにしました。
フレーズは1拍6連符(1拍の長さを6等分した長さ。8分3連符と長さは同じ)を中心に構成しました。
ポップス音楽では、2分音符・4分音符・8音符・16音符…のように、2のn乗で音符が分割されることが多いです。
そのため、あえてそれ以外の分割数の音符を取り入れることで、曲にリズムのずれが生まれ、今回のように早いテンポの曲ではスピード感を出すことができます。
また、部分的にピッチベンドを使い、チョーキング奏法を再現しています。
シンセサイザー
リードシンセ
リードシンセ設定
SuperSawをベースに音色を作りました。使用音源はNative Instruments社のMASSIVEです。
ユーロビートらしさを出すために、今回は立ち上がりの音程を瞬間的に変化させて(1Env)アタックを強調し、わずかにビブラート(5LFO)をかけました。
シンセリフフレーズ
また、1トラックで鳴らすのではなく、中音域担当と高音域担当の2つのトラックに分けて鳴らしています。
- 中音域担当:高音域をカットして音の芯を残す
- 高音域担当:サチュレーターをかけて豪華さを演出
同じフレーズを複数の音色で鳴らすことで、より細かい調整を行うことができます。
この手の手法は、他のダンスミュージックでもよく用いられます。
コードシンセ
リードシンセを同じくSuperSawをベースに音色を作っていますが、こちらは曲の背後に溶け込ませるためにリバーブを多めにかけています。
他ジャンルで言うと、トランスのバッキングコードがイメージに近いです。
対旋律シンセ
対旋律(Aメロ)
リードシンセと音色が近いものを使っています。
対旋律の基本は、メインのメロディとは逆の動きをするということです。
Aメロでは、メロディが伸ばし音の時、対旋律で合いの手として刻みのフレーズを鳴らしています。(見やすくするため、対旋律を1オクターブ上に表示しています)
対旋律(サビ)
また、サビの後半(1分13秒以降)では、主音であるC#の音を中心に、高低差の少ない、刻み中心のフレーズにしています。
細かいフレーズを使うことで、スピード感を出すと共に曲を盛り上げることができます。
対旋律の関連記事↓(注意:別の曲を解説しています)
シンセアルペジオ
アルペジオフレーズ
ユーロビートでは、サウンドを華やかにするためにシンセアルペジオもよく使われます。
今回は下手に難しいことをせず、コードの構成音をなぞらせるようなフレーズにしました。
また、歯切れのよい音にするため、ノート長を少し短めに設定しました。(Max120Tickに対して70~80Tick)
おわりに
今回は、90年代風ユーロビートの編曲について、自作曲を交えながら解説しました。
前回の記事と合わせて、これだけ特徴をおさえていれば、かなりユーロビートらしい曲が作れると思います。
今回解説に用いた曲は2時間ほどで作った即興曲なので、もっと作り込んでいける部分があると思います。(シンセの音色など)
作例の一部にはなってしまいますが、この記事が90年代風のユーロビートを作る際の参考になれば幸いです!
それでは、今回はこの辺にしてきます。
ではではノシ